27歳で緊急脱出!仕事が嫌なので0円でセミリタイア!!

2020年6月に5年続けた仕事が嫌になり資産がロクにないまま勢いで辞めた人間の末路をお楽しみください

無職が書く短編小説2

どうもポテトです。

前回投稿した、短編小説で全米が泣いたようなので二作目を投稿します。

みんなも次作品待ってたよね?

 

ちなみに僕の処女作が見たい人はこっちだよ。

 

potetoo.hateblo.jp

 

じゃあ今日も楽しんでね☆

 

タイトル「表情のゆくえ」

  

「ふはははー!」

正午過ぎ、いつも静かな公園。奥に二台のベンチだけが置いてある寂れたその場所で大きな奇声が鳴り響く。

そう、俺の声だ。

俺は毎週土曜日、正午になると公園に行き、そのど真ん中で立ち屈しながら、一人で笑うのが日課だ。

 

なんでそんな奇行をしているかって?それは俺が奇行種だからだ。あの変な走り方をする奇行種だ。進撃の巨人って面白いよな。

 

冗談は置いておき、俺には笑わせたいやつがいる。だからまずは笑う人の感情を緻密に分析することにした。

 

それ以来、俺は至る場所とシチュエーションで己が自身で笑ってみることで笑いの研究をすることにした。これぞ人体実験。身体は傷つかないが、何か大切なものが傷つく人体実験である。

 

最初は家の中で一人で笑ってみた。でもどうも爽快感がない。もっと圧倒的インパクトと爽快感がないとあいつは笑ってくれないだろう。そこで爽快感の代名詞であるこの寂れた公園というわけだ。

 

そして、この電車一本かけて、わざわざこの公園を選んだのには理由がある。

毎週土曜日、この公園の正午に彼女はいつもやってくる。

 

どうやら今日も予想通りやってきたようだ。

ん?待ち伏せとか俺ってストーカーか?いやいや、いいんだよ、これは人を笑わせたいからやっているから善行のはずだ。そうに違いない。

そうやって俺の中で脳内裁判が起こっている間に、彼女はまるで俺が全く見えていないかのように足早に横切る。

華奢な身体で黒いワンピースを着こなし、黒くて美しい長い髪、そして少し鋭い目尻、それは誰から見ても絶世の美女だった。

 

いや、確かに、公園の奇行種に愛想振り撒く必要はないけど、一応俺たち知り合いだよね?

 

彼女は三か月前まで俺と会社が同じ同僚。入社時も同じ同期というやつだ。

 

三ヶ月前、俺が退職して無職になるまでは普通に挨拶とかもしてくれてたんだけどな。

まぁその頃から冷たくて愛想はなかったけど。

彼女はそういう人なのだ。

誰にでも一歩引いて、対応して、決して笑わない女だ。

 

そんな彼女を俺は笑わせて見たかった。

 

「ちょっとちょっと。昔の戦友が一人寂しく笑ってるんだから、挨拶ぐらいあってもいいんじゃないのかい?」そう奇行種である俺はいう。自分の特徴で奇行種ってつくの嫌だなぁ。

 

「……」

無言で通り過ぎ、奥のベンチの左端に座り、おもむろに本を取り出す彼女。え、なんなの?俺が見えてないわけ?華麗にスルーしすぎだろ。マクドのドライブスルーかよ。

 

そんな風に呆気に取られオロオロした表情をしていると、「あら、ご機嫌よう。いたの?私って無職の人が見えない体質なのよね」そう言った彼女の顔はどこか楽しげだった。こいつ笑わないくせに人を見下す時だけはちょっといい顔するんだよな。

 

てかなにその便利な体質。そんな技あったら意外と人気出ちゃうかもしれないだろうが。見たくないものを見なくていい能力は貴重だ。俺が使えるなら、きっと満員電車で汚いオッサンどもが見えなくなるように使う。電車内の密室で女だけ見えるようにして、俺だけのハーレムを楽しむのさ。

 

「残念。俺はもう無職ではない。笑いを研究する立派な研究者だ。これからは博士って呼んでもいいぞ」そう自慢げに言う俺の顔は端的に言うとムカつく顔をしていただろう。

 

「そう? じゃあ私も無職を解剖して、世の中から無職を消し去る研究者にでもなろうかしら」彼女の鋭いカウンターパンチが繰り出される。いや、怖すぎだろ。俺みたいな奇行種は真っ先に解剖されそうである。

 

こんなやり取りを最近の週末は毎日している。

 

彼女は本を読むため。

俺は笑いを研究するため。

 

それぞれがそれぞれの目的を持って自然と集まっていた。まぁ俺の場合は研究と評して彼女に会いにきているだけだが。

 

俺は彼女が好きだ。

最初会った時は口数も少なく無愛想すぎて、生きにくそうな奴だと思ったし、関わりづらそうとも思った。

だが、とある休日、たまたまこの公園に訪れた時、見てしまったのだ。

ベンチの左端で本を読む彼女が一人で楽しそうに笑っているのを。その普段からは考えられない優しく温和な彼女の表情が忘れられない。もう一度あの顔が見てみたい。そう思った。そう思い続けるうちにこれが恋という感情だと気づいたのだった。

 

だが自分の感情に気づいた時にはもう既に遅し、俺は無職になっていた。仕事のストレスで辞めてしまったのだ。あのまま仕事を続けていたら俺は笑えなくなってしまっていただろう。

 

無職だと、いくら好意を抱こうが、それは包み隠さねばならない。だってキモがられるのがオチだから。相手を気持ち悪がらせた上に自分も傷つく、そんなわかりきった不幸を引き起こしたくはない。

 

だから俺はこれからも彼女との距離を縮めようとは思わない。

どれだけ恋焦がれようとも、俺は自分の気持ちを彼女に明かすことはないだろう。

 

今週も土曜日がやってきた。外はお日様が明るくいい天気だ。

俺はまた彼女に会えると思い、ルンルン気分で誰もいない公園へ向かった。

そして、彼女がくるのを待つ。笑いながら。

だがどうしたことか、今日はいくら待っても彼女がこない。

あんまりにこないので俺は笑い疲れて、ベンチに座り込んでしまった。

 

そうやって、ただぼーっとするだけの時間が過ぎていく。

俺が笑わなければ実に静かでいい公園だなと思った。なに?俺だけがこの公園の足引っ張ってるみたいじゃん。ごめんな。

 

その日は結局、日が暮れるまで待っていたが、彼女はこなかった。

いったいどうしたのだろうか。

なにか事故にでもあったのだろうか、あまりに俺が奇行種だから嫌われてしまったのだろうか。そんな風に様々な不安が俺の脳をよぎる。その日の晩御飯は全然手につかなかった。働いていた時でもストレスで飯が食えなかったことはなかった。それだけ彼女が俺にとって大きな存在だということだろう。

 

次の土曜日もいつものように公園にいこうと思っていたが、その日は家族との用事でいつもの時間にはいけなかった。六十歳になる母の誕生日を祝っていたのだ。彼女のことが心配で公園に行きたい気持ちでいっぱいだったが、六十歳という大台を迎えた母の誕生日を祝う会にいかないわけにはいかなかった。

 

誕生日会が終わって、時間は十六時。日が暮れようとしていた。だけど俺は会が終わるやいなや急いで公園へ向かった。今日を逃すとまた来週の土曜日まで悶々としなければならない。それだけは絶対に嫌だった。

 

今日こそ来ていてくれ。そしてまだ帰らないでくれ。今俺が行くから。そんな風に頭の中でつぶやきながら急いで公園に向かう。

 

そしてやっとの思いで辿りついた公園には意外な光景があった。

 

そこにはいつもの長い黒髪で誰からでも美女と呼べる彼女の姿があった。

いつもと違うのは彼女の表情だ。

泣いていた。

公園で一人で泣いていた。

この状況で俺はどうしたものかと一瞬ためらったが、すぐに彼女の元へ駆け出した。ここで見ないふりをして帰るという選択肢をとれるほど、俺は彼女に無関心ではなかった。

 

どうやって声をかけようか。泣いてる女の子に声をかけるイケメンはどうするんだろうか。そんなことを一瞬考えようとしたが、すぐに自分には無理だと悟り、ただ自分らしくいくことにした。

 

「ふぅっはっはっはー! 何を泣いている冷徹女めが! この笑いの天才である俺が悩みぐらいなら聞いてやろうではないか! ふぅっはっはっはー!」

精一杯、気まずくない空気を作ろうとして、副作用で空気が壊れる公園。変な空気になるよりまだ壊れたほうがマシだろう。

 

「相変わらず、気持ち悪いわね。もう外も暗くて、余計怖いからほんとやめて」

彼女はガチでひいていた。

 

そうやって強い口調を使う彼女だが、目元にはまだ涙の跡がある。泣きたいのを必死で我慢して強がっている表情にも見えた。

 

「なにがあった?」

俺は静かにもう一度問う。

「あなたには関係ないわ。」

彼女はそう言った。そう言うだろう。そういう奴だ。知っている。でも俺は何度でも問おう。

「なにがあった。」

彼女は真剣に話そうとしている人を見抜けない間抜けでもないし、そういう人を邪険にできるほど冷徹な人間ではないことも俺は知っているのだ。

 

重々しい彼女の口が静かに開く。

「実は私、小説家を目指しているの。でも私ってあんまり感情が豊かなほうではないから、いつも上手く書けないの。人の心理を上手く文字で伝えることができない。当たり前よね、伝える感情が私にはなにもないもの」

そう彼女はいうと、おもむろに一枚の紙を出してきた。

小説の採点のようなものが書いてある紙だった。おそらくなにかしらに応募して返ってきた品評というところだろう。そこには、複数の編集の人の品評が書いてあったが、内容はどれも同じだった。物語の設定や文章はしっかりしているが、人物の感情表現が拙い。全てを下落させる致命的であるとのことだ。

 

なるほど、彼女は夢を追いかけ、その道の険しさゆえに泣いていたのだ。そう理解した時俺は黙ってしまった。だって俺は夢を追いかけたことがないから。夢を追いかけることもせず、現実からただ逃げているだけの無職に言える言葉なんて何も思いつかない。それがすごく悔しく、唇から血が流れる。

 

そうして一瞬、二人の間に静寂が流れる。

何か言わなければ、自分から理由を聞いておいて無言はまずい。何か言わなければ。そうやってただ俺は慌てていた。顔だけには出さないよう気をつけて。そうしてなんでもいいから何か言おうと口を開こうとした時だった。

 

「ヒャッハー! ねぇねぇ、君カワウィーネ! 今から俺たちといいところいかなーい?」

あからさまな世紀末風味のモヒカン男の三人グループがきた。

よくこんな空気の中きてくれたな。邪魔すぎる、公園の空気壊すなよ。いや俺も壊してたけどね?でもお前らはダメだ。

 

そうイラついた俺だったが、ビビりであるからしてすぐに何か言うことができなかった。いや今どきモヒカンとか怖すぎだろ。汚物は消毒だーってやられたら怖いよ。無職は汚物じゃないよ?

無言なのは彼女も同じだった。彼女も同じく怯えているように見えた。そんな彼女を見て俺は不謹慎ながら、こいつってこんな顔もするんだなと思ってしまった。明らかに派手なモヒカン男ではなく彼女に目がいきがちなのは俺の純情なる愛ゆえだろうか。いやぁ、俺って無職なのに青春してるよな。

 

「ちょっとちょっと俺たちのこと無視しないでよ。ん? 何持ってんの? 面白い物? 俺にもちょーだい!」

そう言ってモヒカン男の一人が彼女の紙を取り上げる。

「んー? お姉さん、小説家なの? でもすごい評価悪いじゃん! 才能ないんじゃないの? まぁどうでもいいや、早く俺たちと一緒に遊んでよ!」

そんな侮蔑の言葉を口にしたモヒカン男が彼女の腕を掴んだ。

 

「いやっ! やめてっ!」

彼女は嫌がった。その顔は少し泣きそうになっていた。モヒカン男が怖いからじゃない、きっと小説の才能がないと言われたのが悔しくて、悲しいのだろう。

 

いつも気が強く凛とした彼女からは想像できない顔をこの数分でどれだけ見ただろう。俺は彼女のことを何も知らない。そう思った。でもこんな顔は見たくない。知りたくもない。――俺が見たかった彼女の顔はこれじゃない。

 

「……ふ……ふっ……ふぅっはっはっはーーーー!」

――俺は笑った。もう暗くなりそうな静かな公園で。ただ大きな声で精一杯笑った。

「なんだこいつふざけてんのか? うるせぇ! 黙りやがれ!」

「ふははは! フヒヒヒ! ふっはっはっはっはー!」

何を言われようと俺は笑った。

そのうち、声を聞いた近隣の人が集まってきた。そりゃあこれだけ静かな時間、静かな公園でずっと大声で笑っている変質者がいたら人も集まるだろう。だがそれすらも気にせず俺は笑う。

「なんだこいつ、気持ちわりぃ。もういい! 帰るぞ!」

人が集まり居心地が悪くなったモヒカン男たちが去ってくれた。

奴らがいなくなったことを確認して俺はようやく笑うのをやめた。

そして速攻で近隣住民の人に土下座して謝った。さすがにやりすぎた。もう当分俺はこの公園にはこれないだろう。でもそれでいい。

 

彼女が笑えないなら、俺が笑おう。

彼女が笑えないことで否定されるなら、僕がもっと笑って俺が否定されよう。

俺は無職だ。人に否定されることは慣れている。

 

そして何より俺は彼女を笑わせる研究者だ。ならばその対極である彼女の泣き顔を放っておくわけにはいかない。

 

彼女が泣くなら俺が笑わせよう。

それが俺の使命だ。

 

「あなたって本当に無茶苦茶ね」

「無職だからな」

「それに俺はただ笑いの研究をしただけだ。笑いで敵を倒せる。いい研究材料だった。断じてお前のためじゃない」

「無職のツンデレなんて、全く需要ないわよ。本当におかしな人ね。やっぱり解剖しようかしら」

そう言う彼女の顔はいつもの冷たい表情とは違い、少し笑っているように見えた。

 

(完)

 

終わりに

(恒例あとがきです)

全米を震撼させる僕の2作目でした。震撼させすぎ問題。

毎回モヒカン男に女の子を襲わせて、それを撃退して幕を閉じるワンパターン野郎に成り下がってしまった僕である。もはやモヒカンはレギュラー。

 

話が大きく変わりますが、当ブログの今月PVが3000を超えました!有難うございます!

1日平均100PVを超えるのはブロガーの登竜門で、多くの人間が突破できず挫折するといいます。

僕はそんな関門すら、中二病小説を適当に投稿して突破するのだった……。